fc2ブログ

哺乳中子豚の下痢②

下痢の原因は病原体によるものもありますが、
まずは環境改善と、下痢症状の対応から。

b1.jpg


早発性の下痢は、水様性なのが特徴的で、
下痢を発生した子豚はビショビショになります。
体内では、水分欠乏状態による体液のバランスが崩れ、
体外では、濡れたことによる体温低下が重なり、
急激に体力を消耗してしまいます。

対応は、上記の状態を緩和する方法をとります。
①体温保持
 コルツヒーター(電気式)もしくは ガスヒーターなどで
 冷えた体を温めてあげます。
 濡れた体が冷えないように、市販の乾燥剤(ミストラル
 スタローサンなど)を体にまぶしてあげると良いでしょう。
 
②補液
 市販の電解質をぬるま湯もしくは水でといて与えます。
 初めは少し濃度を濃い目に、写真で見られるえづけ用パット
 を使います。
 可能であれば、腹腔内投与も実施します。
 投与するのは、暖めたソルラクトもしくはブドウ糖液を使用します。

③抗生剤の投与
 注射で投与する場合もありますが、
 直接腸内に作用するよう、飲水投与をすすめします。
 電解質に、アンピシリン系、リンコマイシン系などの
 飲水投与剤を溶かしてやります。
 分娩舎全体で発生した場合にはお役立ちです。
 
 市販のポンプ式で投与する抗生剤を与える場合もあります。

 それでも下痢症状が治まらない場合は、
 抗生剤の注射投与を行います。
 下痢症状の新生子豚は、とても弱っていることがあるので、
 投与する薬剤の成分や刺激性にも 注意してあげましょう。

注意:下痢を発症した子豚を里子に出す場合は、
   完全に下痢が治まってから里子をしましょう。

(つづく)


哺乳中子豚の下痢①

分娩舎で、哺乳中の子豚に下痢が発生することがあります。
関東地方に比べて、南九州は、
農場管理者の下痢発生に対する感覚が、
「当たり前」的なものを感じずにはいられません。
(つまり余程重症でないと気にしないと言うことです)

しかし、下痢の発生は、その後の発育状況に
意外と影響するのではないかと思うのです。

という訳で、哺乳中子豚の下痢発生要因と対応についてです。

哺乳中子豚の下痢は、発生する時期によって、
以下のように分類していました(そこの農場でのルールですが)

早発性下痢:分娩~3日齢あたり
中期:7日齢前後
遅発性下痢:10日齢~離乳まで

遅発性下痢は、離乳をすれば自然と治ってしまうことがあるので、
農場でもそれ程注目されない様です。
問題は早発性下痢の方で、子豚が小さいだけに、事故率にも影響します。
(つづく)

スス病⑤(治療)

スス病原因菌(スタフィロコッカス)の
性質に対応した抗生剤を使用しましょう。
スタフィロコッカス:グラム陽性菌
一般的には、ペニシリンなどが使われているようです。

そのほか、ステロイド剤や非ステロイド剤による、
消炎剤を投与することがあります。

ステロイド剤(プレドニゾロンなど)は、
皮膚病治療や鎮痛に投与することがあります。
その反面、
多量投与で免疫能力の低下をまねくおそれもあるので、
連続投与や多量投与は避けましょう。
スス病の罹患豚(りかんとん)は、免疫能力が低下している
おそれがあります。

薬剤投与による治療をする場合には、
予め、対応菌種と投与量、休薬期間を確認しましょう。

(おわり)

抗生剤の使用については、別項目で解説する予定です。

スス病④(皮膚消毒)

(治療効果と罹患豚(りかんとん)に対する刺激の穏やかな順ランク)
1 体表洗浄、コーン油もしくはヒマシ油などの食用油を体表に塗布
2 610ハップ(ムトーハップ)で体表洗浄後、アルコールで消毒
3 逆性石鹸による全身の発砲消毒
4 クリスタルバイオレッド浸漬(しんし)
5 ヨード系消毒薬噴霧後、乾燥剤塗付

1は、古典的方法で、もちろんうまくいく場合もあるようです。
時に、体表に塗布する油をなめさせることも効果があるようです。
豚舎はベトベトになるんだろうな…。

2、4、5は、実際訪問した農場で伺った方法です。
ムトーハップは、硫黄成分の入浴剤なので、
殺菌効果もあるのかもしれません。
馬では、温シップに使用することもあります。

3は、知り合いの獣医さんに伺った方法です。
自分でも試したことがありましたが、当時治療効果が出るまでに
時間がかかるということを理解していなかったため、
1週間で打ち切ってしまいました。

4は、紫色の染色液で、
スス病原因菌の性質(グラム陽性菌)の殺菌に効果的とのことです。
比較的症状が軽症であれば有効です。
実施している農場では、
「お風呂」をつくり、ジャボンと子豚をつけていました。
ただし、
豚が一時的に紫色に染まってしまうのは覚えておいた方が良いでしょう。

5は、おそらく罹患豚にとって一番刺激的かもしれません。
(アルコール消毒も同様)なにせ、体中「傷だらけ」なので。
ヨードチンキやヨード系消毒薬を使用する場合は、
くれぐれも希釈濃度に注意してください。
刺激が強いので、「噴霧」を行ってください。
極度に弱っている子豚では、
「お風呂」だとショックで死ぬこともあるそうです。
乾燥剤は、
下痢のときや分娩時に体表を乾燥させるものを転用
しているようです。
清潔なものを使用して下さい。

対応策2、3、5は、比較的作業時間がかからないので、
スス病発生規模が大きい場合に有効です。

1~5、いずれにしても、症状完治までには1ヶ月程度
かかると言うことです。
(つづく)


スス病③(原因菌)

「スス病」というのは通称で、
正式な病名は「滲出性表皮炎(しんしゅつせいひょうひえん)」
と言います。

原因菌は、スタフィロコッカス ハイカスというものです。
ちなみに、この菌の仲間には、スタフィロコッカス オーレウス
という奴がいます。黄色ブドウ球菌と言われる、食中毒の原因菌です。

スタフィロコッカス ハイカスは、
ヒアルロニダーゼという酵素を産生します。
よくお肌のお手入れには、
ヒアルロン酸配合の化粧水とかありますよね。
ヒアルロニダーゼは、このヒアルロン酸を溶かしてしまうのです。


↑こう書いてしまうと、何だか恐ろしい病原菌のようですが、
ハイカスさんは、実は、豚の鼻の中や喉の奥、皮膚に普通にいる、
いわゆる常在菌です。
ですから、病気に対する抵抗力の強い豚は、発症しないようです。
(つづく)




スス病②(豚疥癬)

どんな病気もそうですが、
発生した時点で対応を最低二つは考える必要があります。
発生した病気の治療と予防です。
農場で病気が発生した場合、特に重大な疾病の場合、
治療対応に追われて、予防策まではなかなか手が回らない
というケースが多い感じがします。

予防策は短期間でめざましい成果が上がるとは言い切れないので、
中々継続しにくいのかもしれません。

いずれにしても、病気の起こる要因は何かを知っておくべきかなと思います。

で、スス病の発生要因です。
(分娩舎でスス病が発生した農場で伺う質問)
1 母豚の駆虫はしましたか?
2 それはいつ実施しましたか?
3 分娩舎の温度はどんなですか?
4 カーテンは開けていますか?
ということをとりあえず伺っています。

スス病の原因菌は、ヒフにくっつくので、
ヒフに傷があると感染し易いです。
ヒフの傷といっても、切り傷だけとは限りません。
例えば疥癬です。
豚の疥癬は、ヒゼンダニというダニによって起こります。
ヒゼンダニは、豚のヒフに穴をあけ、その中に隠れて繁殖します。
ですから、疥癬になった豚は、ヒフが痒くなり、
あっちへゴリゴリ、こっちへゴリゴリしだします。
ひどい場合は、背中の皮が一枚まるまる剥けてしまうこともあります。

疥癬は駆虫薬で落ちますので、母豚は分娩舎へ移る前に
駆虫しましょう。
n1.jpg

(つづく)

スス病①

更新停滞でしたが、何とか復帰(のつもりです)。
季節的にスス病が散発しているようなので、
スス病のコバナシを。

スス病は分娩舎~離乳舎で発生するヒフ病の一種で、
意外と厄介な病気です。
よく畜舎の環境(換気や温度)管理が問題といわれ、
対策も環境改善があげられています。

ところが、この病気の説明、何か納得がいかないのです。
スス病以外の疾病も同じですが、
病気が何故起こるのか、どうやって対応すればいいのか、
具体的に分かっていないと、治療も効果が得られません。

という訳で、重箱の隅をつつくようなコバナシです。

スス病は名前の通り、体が黒くすすけてしまう病気です。
病気のなり始めは、耳の根元やわきの下、お腹のあたりに
紅斑(ピンクの丸い腫れ物)ができ、
あれよあれよと言う間に全身に広がって、
耳の端っこから黒いホコリがくっつき始め、
気がつくと全身汚れ、触りたくなくなるほどになり、
しまいには、子豚は痩せて死んでしまいます。

いったん治療で治っても、再発することがあるので厄介です。
また、発症すると、完全に治るのに時間がかかります。
(つづく)
プロフィール

串木野 あいら

Author:串木野 あいら
管理のスキマに養豚コネタ。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる